一、始まりの夢は……?

3/9

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
                ✳︎  今日の夕食はビーフカレーだ。辛口と中口のミックスカレーだ。一也は席に着きカレーを頬張る。いつからか混ぜないで食べるようになった。ただ、カレーの日は決まっておかわりをする。それだけ一也はカレーが好きなのだ。スプーンと皿に描かれた模様が当たってかちゃと鳴る。物の数分で二杯完食し、一也は風呂へと向かう。  風呂から上がると、祖父が話しかけてきた。 「おい、ちょっとこっち来いや」  祖父が少しストレスの溜まる言い方で一也を呼ぶ。無視しているとどんどん呼ぶ声が大きくなり、祖母が一也を()かす。仕方なしに祖父の元へ向かう。 「こっち、こぉいよぉ」  一也が近づく度に声が不気味になる。一也はくるりと身体を反転させ玄関に向かって走る。後ろで人型が溶けていくのが見えた。一也はスピードを上げる。 「待てぇ、おぉぉい」  祖父がもう原型を(とど)めていない。青色の触手のようなものがこちらに伸びてくる。その触手から青い液が滴る。一也は玄関の鍵を開け、外へと出た。しかし外は死者たちが彷徨(さまよ)い歩いていた。死者たちは一也に気付き、こちらへゆっくりと向かってくる。パリン。家のガラスが割れた。祖父が助けに来たのだ。一也は祖父の手を取る。いや、取ったはずだった。その刹那、祖父の手が溶けた。そして一也と融合したのだ。前は死者、後ろは謎の生物。一也は最後の気力を振り絞った。 「う、うわぁぁぁぁぁ!」  その声は町中に響き渡った。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加