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一也は今日、ぼっちだ。英語の授業のペア以外はほぼ話さない。独り言は話しているが。誠二は二年生から別クラスになってしまったからあと友達と言える人なんて三笠とかしかいない。でも三笠は今日、休みなのだ。だから今日はぼっちなのだ。だから一也は朝の会が終わってから先生にこう尋ねた。
「今日、三笠はどうしたんですか?」
「それが分からんのだよ。どうしたものかね」
先生は濁して言ったがストレートに言うと無断欠席、と言う事だろう。三笠は日々休んでいる人ではなく、病弱なのだ。確か親が共働きで三笠が起きている時は家に三笠一人しかいないとか。ただ、二年生になってから初めての欠席だ。新しく担任を務める先生には仮病だと思われているのだろう。実際一年生の最初もそうだった。
今日、一也は存在を出来る限り消して過ごした。
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今、一也は三笠の家の前にいる。チャイムを押しても寝込んでいるなら出てこないだろう。試しに一度チャイムを押そうとするが躊躇ってしまい、あと少しのところで手が止まる。
ピンポーン。一也の手が誰かに押され、その勢いでチャイムが鳴る。
「おい!何すんだよ」
「へへっ。悪い」
そこにいたのは誠二だった。
「どうせここにいると思ったからさ。俺も見舞いに来たぜ」
誠二も三笠の事が心配なのだろう。ガチャ。三笠の家の扉が開く。出てきたのは女の人だった。
「あ、えーっと、カズくんとマコトくん……だっけ?私、洋ちゃんの母です」
「あ、お母さん。初めまして」
「どーも、初めましてっす!」
三笠の家は両親共働きなので三笠の母に会ったのはこれが初めてだ。今日は仕事が休みだったのだろうか。
「洋介さんは大丈夫ですか?見舞いに来ました」
一也は初対面の人に対して敬語を使う。三笠の母は軽く微笑んだ。が、すぐに真剣な顔になった。
「洋ちゃんは寝たっきりなのよ。今……」
「本当か!おーい、洋!大丈夫か!」
誠二は家の奥に声を投げかける。しかし返事は無い。三笠は死んでしまったのだろうか。それとも介護が必要な身体になってしまったのだろうか。
一也たちは三笠の家の中へと駆け込んでいった。
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