上半期

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上半期

 入室すると、すでにメンバーはそろっていた。 「おや」  思わず声をもらしたアキに、全員の視線が集まる。 「みんなもう来てたのか」  ドアを閉め、ツカツカと歩く。着席した。 「遅刻じゃないから大丈夫よ」  向かいのナツがカラッと笑った。ショートカットからのぞく耳には、赤い飾りが揺れていた。 「そうだな……」  アキは自分の腕時計を見た。約束の時間までは、まだ数分ある。 「どうする? みんなが良ければ、もう始めちゃう?」 「私はいいよ」 「俺も」  方々から、同意の声が上がる。 「ようし、じゃあ始めよう」  アキはパンと手をたたいた。それからスッと椅子から立ち上がる。 「ではこれより、20××年度、事業計画会議を行いたいと思います。今年の司会は私、アキが務めます。どうぞ、よろしく」  一礼すると、拍手が起きた。  彼らの間に上下の関係はない。よって、司会進行は毎年メンバーが順番に行うことになっている。 「ええと、まずは4月」 とアキは言った。 「これは、春でいいよね」 「うん」 「さすがにね」  満場一致。アキは手元のタブレットにメモをした。 「じゃあ、5月は?」 「5月も春でいいんじゃない?」 とナツが言った。 「5月にいきなり夏ってのはね……私もしっくりこない」  隣に座る、ボブヘアの女性に目を向ける。 「ハルはどう?」 「私もそれでいいと思うよ」  ハルと呼ばれた彼女がうなずくと、重い髪がさわっと動いた。 「5月後半になったら、少し暑くしてもいいかもね」 「そうね、いきなり温度上げたら、また人間たちから文句出るだろうし」
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