上半期

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 ハルが正面を向いて、アキを見た。 「その辺は、後でナツと私で詰めておくから」 「はいよ、よろしく」  アキはメモを取り、顔を上げた。ハルの向かい、自分の隣に座る、寝ぐせのついた男性に目を向ける。 「ところで……今年の台風の予定は?」 「上陸と接近を含めて5回って話」 と男性が答えた。 「また多いねえ」  ナツが天井を仰いで考えた。 「配分はどうするの?」 「まあ、半々ってところかな。7月に2個、9月に2個、10月に1個、とか」 「えええ」  アキが思わず顔をしかめた。 「それじゃ、俺の取り分もっと減っちゃうじゃん。ただでさえ短くなるってのに」 「仕方ないだろ、気候が変わるんだから……増えちゃうんだよ」 「10月の分を、6月に回したら?」 とハルが提案した。 「6月に台風ってさすがにどう?」  ナツが首を傾げた。 「沖縄地方ならありだけどね。うちはどうかな……」 「じゃあ、9月に4個くらいまとめるとか」  可愛い顔をして、トンデモナイ提案をするハルである。 「んなの、無茶だろ!」  驚いて、寝ぐせ男が声を上げた。 「そのペースじゃ、毎週台風来るじゃんか! さすがに気象庁が黙ってないぞ」 「週1で台風……嫌だな」 とアキがつぶやいた。 「じゃあ、やっぱり個数を減らすしかないんじゃない?」  これはナツ。 「勘弁してくれよ、これでもだいぶ減らしたんだ。海域含めたら、もっとあるぞ」  眉を下げて、頭をかく。ボサボサ頭が、さらに荒れた。 「――タイ、」  ふいに飛んできた澄んだ声に、一同の注目が集まった。  ナツの隣に座る女性。長く伸ばした髪が、切れ長の目の端を隠している。 「だったら、うちと合わせてもいいよ。1つくらい」 「本当に!」  寝ぐせ男――タイと呼ばれた男性が、ぱあっと顔を輝かせた。 「ありがとうツユ! いつも優しいよなあ、大好きだ!」 「私はあなたのこと、そんな好きじゃない」 「あ、はい、すみません……」  上げてはすぐに下げられて、やや可哀想なタイであった。
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