上半期

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「いいの?」 とナツが尋ねた。 「台風じゃ、恵みの雨にならないでしょ」 「まあね。でも、上手くやるよ、大丈夫」 「ふうん、ツユがそう言うならいいけど」 「でね、ナツに相談」  ツユは、チラッと流し目を送った。 「わかってるよ。7月を少し分ければいいんでしょ」  ナツはにかっと笑って、隣の肩を叩いた。 「察しがよくて助かる」 「というか……毎年のことだもんね」  ナツは冷めた視線を、タイに送った。 「あんたは本当、数を何とかしてよ。台風多すぎだって。ここ十数年ずっとそうじゃん」 「善処します……」  答えつつ、多分無理だろうと思うと、胃が痛むタイであった。 「――整理していいか」  アキが会話に入った。 「5月までは春だろ。で、6月は?」 「前半は夏でいいよ」 とツユが言った。 「何なら、3週目くらいまで夏で。月末から、うちがもらいたい」 「ほほう、ナツはどう?」 「構わないよ」  腕を組みつつ、うんと大きくうなずく。 「梅雨明けはいつにする?」 「7月中頃でどう?」 「いいよ」 「了解、」  アキはメモを取った。 「で、8月は……夏か」 「そうだね、8月は私の独壇場だ」  ナツが嬉しそうに笑った。 「9月……も、前半は夏だよなあ」  アキは寂しそうに言った。 「そうだねえ、いきなり涼しくするわけにいかないし」 「せめて、9月中には秋にできないかい?」 「頑張れば……うん、夏日は抜けられるよ。月の後半でどう?」 「よし、そこで手を打とう。後半は俺がもらうよ」 「おう、よろしく」  ナツが小さく手を振った。 「9月後半から……秋と」  タブレットにメモをする。 「さて」  顔を上げて、チラッと隣を見る。タイと反対側の席には、10代後半くらいの少年。もちろん、本当に10歳代というわけではない。  寒がりなのか、他のメンバーより、衣服が1枚多かった。
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