下半期

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「じゃあ、最後だ」  仕切り直して、会議を進める。 「冬から春への移行」 「ほら、ハル起きなって」  ナツの平手が、一発強く打った。 「いたっ……起きてるよ、さすがに」  ぷうっと頬をふくらませて、ハルはぶつぶつ文句を言っている。 「いーや、私は見たよ。一瞬、意識を飛ばしたあんたを」 「……」  えふん、とアキは咳ばらいをした。 「で、ハル。いつからもらいたい?」 「えーと……桜の開花もあるし、3月初めにはほしいなあ。春一番を、そこで吹かすつもり」 「だってさ、フユ」 「じゃあ、3月から春でいいんじゃない? だってスギ花粉も飛ぶんでしょ?」 「花粉はもっと前から飛ぶけどね」 「よし、3月から春だな」  アキはメモを取った。 「うん、これで1年の予定が決まった」  満足そうにタブレットを見て、うんとうなずく。 「細かい内容は、それぞれ持ち帰って、いったん詰めよう」  メンバーが、はーいと元気よく返事をする。 「では、今日はこれで解散!」 「お疲れ!」  ガヤガヤとにぎやかに席を立ち、しばし片付けと共に雑談となった。 「――家帰ったら、すぐ仕事始めなきゃ」  ぼんやりとハルがつぶやいた。 「ハルはそれが大変だよね」 とナツが反応する。 「私はしばらく時間あるからね、ゆっくり進められる」 「なんて余裕かましてると、ギリギリになって慌てるんでしょ」 「ハハハ……よくご存じで」 「4月はできるだけ南風を吹かせたいんだよね」 とハルは言った。 「ほら、桜咲いてからは寒い日が多くなっちゃったからさ。4月からは……人間たちに春だなって思ってほしくて」 「なるほどね」  ナツは小さく笑い、それからうなずいた。 「頑張りな……春」
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