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過去への扉2
青く光る扉をよく見ると、それはキラキラと澄んで透明感のある細かい青い光の粒子でできていた。天ヶ瀬が扉の前に立つと真ん中の粒子たちが横にスライドするようにスッと移動した。それはまるで光の粒子自身が意志を持っているようだった。
「さあ、ではこれを持って」
天ヶ瀬から渡されたのは銀色のゴツいリングだった。良く見るとチェーンを通しネックレスのようになっている。
ゴツいくせに何故か品のある変わったリング。
「これは監視者見習いの身分証明書のようなものだから首からぶら下げてくれるかな。一応外からは見えないように服の内側に入れておいてね。大切なものだから念の為他の誰にも見られないようにした方がいい」
『見習いのうちはリングが必要だけど、本物の監視者になればそのうち必要なくなるはずだから』と天ヶ瀬は心の中だけでつぶやいた。
蒼井はそれを受け取り素直に首にぶら下げた。見た目ほど違和感はないようだ。
「準備はいいかな。じゃあ、二人とも気をつけて行ってきてね」
全く緊張感のない九条に声をかけられた二人は、幻想的に青く光る扉を潜った。
引率の天ヶ瀬は九条がオーナーをしているブルーローズの店長兼ソムリエをしている。長身で銀髪、日本人離れした彫りの深い顔をしていて少し近寄り難い感じがするのだが、柔らかな笑顔と細やかな気配りで老若男女問わず人気がある。間違いなくブルーローズの顔である。そんな天ヶ瀬が、今日は店には出ずに蒼井の引率者として同行している。
扉を潜り抜けると、そこには驚くほど見慣れた景色が広がっていた。少し違うのは、地面に足が着かず空中に浮かんでいることぐらいだろう。浮かんではいるが足は地面ではない何かをちゃんと踏み締めている。しかし下には人間が生活している姿が見えるからここが監視する場所のようだ。
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