過去への扉2

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天ヶ瀬はそう淡々と告げた。しかし、心の中では 『蒼井くんが何もできないなんて、そんなことは万が一にもないはずなんだけど…… まぁ、連れて行けば分かるかな? 九条さんが何をさせたいのかも知りたいし』と考えていた。 この天ヶ瀬の心の声もまだ今は蒼井に届かなかった。 『蒼井くんはいつ私の心の声が蒼井くんが聞こえていないことに気づけるかな。ここに来られたのだからあとは彼次第なんだけどいつコントロールできるようになるか楽しみだな』そんなことを天ヶ瀬だけは思っていた。 レストラン・ブルーローズのオーナーと店長は蒼井と同じように人の心の声が聞こえる能力者。尚且つ太古の昔に失われた力、次元の扉を操る能力者だった。 下に広がる世界から聞こえてくるはずの心の声がいつもと違って気持ち良いくらいに心に直接届かない。その事実に蒼井は爽快感を覚えていた。 『こんなに人がいるのに心の声が聞こえないなんて生まれて初めてだ! すごいなー、もうこのまま聴こえなくても良いくらいだな。いくら天ヶ瀬さんが先生だからってこんなことまでは教えてくれないだろうな』 そんなことを思う蒼井は初めての次元移動で平常心を保つことができず、冷静に考えられていなかった。天ヶ瀬の心の声が聞こえないのも6次元にいるからだと思って疑わなかったのだ。  本当は違う理由があることを知るのはもう少し後になってからだった。
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