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「このドッグタグはここへ戻ってくるための鍵の代わりです。肌身離さず持っていて下さい。決して無くさないように」
そう言われて受け取った銀色のドッグタグは鎖もついていてネックレスになっていた。9桁の数字だけが書いてあるシンプルなもので金属特有の冷やりしたものだった。指紋もつかない特殊加工のものである。数字の上8桁は今日の日付の様だが最後の1は何を表しているのか分からないが鮫島李花はそんなことは気にも止めなかった。
一刻も早く過去へと行きたい鮫島李香。
「もう、過去へ行けるんですか? どうすればいいんですか?」
もう用は済んだとばかりに自分の目的だけを話している。
それでも九条はほんの僅かな感情も表に出さずに話し出した。
「では部屋の中央、丸いテーブルの近くへ移動して下さい。それとお支払いはこちらに帰ってきた時で結構ですので」
鮫島李香は言われた通りに部屋の中央へと移動した。すると、女の左側に白い扉が突然現れた。白い扉はホテルの客室の扉のように向こう側は全く見えない。九条の説明は続く。
「そのタグをドアノブに翳して下さい。そうすればあなたの行きたい過去の時間へと行けます。この場所に帰りたければタグに書いてある数字を声に出して言ってください。現在へ戻ろうと心から願えば扉は現れますから」
そう言われてタグを翳すとドアが開きキラキラ光る青い光のカーテンを抜けるとそこは見覚えのある風景だった。
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