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序章
飛行機で目的地へ行くのに直行便ではなく途中の経由地で別の飛行機に乗り継ぐことをトランジットという。
飛行機を乗り換えるように今いる次元から全く別の現在とは繋がらない次元へと移ってしまうことがあるらしい。例えばパラレルワールドへ行くことがそれに当たるようだ。
そして中には次元を乗り換えたことに気付かず、行き着いた別次元から帰って来られない者もいる。
レストラン・ブルーローズのオーナーである九条薫は、ディメンションという名の楽器のリペア店を営んでいる。
ディメンションの従業員は2人。1人はピアノの調律や楽器の修理をする凄腕リペア職人で彼はいつも外回りをしている。もう1人出来る事務員でもある接客担当がいるのだが訳あって今は長期出張中だ。それと店主でありピアニスト、尚且つ過去や未来へとつなぐ扉を開くことができる九条を加えた3人がディメンションに所属している。
人生で一度も後悔をしない人間はこの世には存在しない。
そして幸せに飢えた満たされない人間はその原因を過去に求めたがる。生きていれば未来を変えられる可能性があることからは目を背ける。
それらは皆、過去さえ変えれば幸せになれるのだと信じているのだ。
その一方では幸せだった過去を忘れられずに自分の心の時間を止めてしまった者さえいる。
人は過去や未来を生きているのではなく、現在である今を生きているのだというのに。
そして今日もまたディメンションには不思議な扉の力を求めて、人生の彷徨い人がやって来る。
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