紙薬

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 最近、読書をしていると、目にした活字が何かに食われるようにして消えていく。他人に本を見せても文字は消えていないと言われるので、自分に原因があるようだ。そこで、とある筋から紙薬(かみぐすり)と呼ばれる薬を一週間分、手に入れた。五センチ四方の黄ばんだ紙に、かすがいをねじったような記号が規則正しく列をなして書かれている。服用方法は折りたたんで飲み込むだけ。  服用開始から五日後、喉の奥に引っかかるような違和感を感じたので、思いきり咳をした。吐き出したのはくしゃくしゃになった一枚の紙。広げてみれば、ねじれたかすがい達が絡み合い、あちこちに枠を形成していた。枠の中では、でっぷりとした蛭のような生き物がのたうち回っていた。
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