TAKE 45 エンディング

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TAKE 45 エンディング

 どうしようっ。僕は興奮のあまり、あり得ないことを言いそうになった。  駿矢になりきろうとしたのに。いつの間にか僕の心にリンクしてしまったんだ。  ――――享祐と……呼びそうになった。  わかっただろうか。今の、気付いただろうか。もう一度やればいいってもんじゃない。そうじゃなくて……。  享祐の激しいキスと抱擁を受けながら、僕は恐怖におびえている。やがて享祐の唇は僕の耳元にと移って来た。  ――――大丈夫だから……。  そう聞こえた気がした。 「おまえの……言う通りだ……俺は……間抜けだ」 「相馬さん……」 「おまえと離れてなんか生きていけない。そんなことわかってたんだ。だから、どうにかして傍に置こうとしたんだな……我ながらみっともない奴だよ」 「譲れないものを得るためなら、どんなにみっともなくても構わない。だけど、あんたのはズルだ。どっちもなんて欲張って……さ」  ここで僕の気持ちはようやく落ち着いてきた。もう少しだ。もう少しでエンディングを迎えられる。 「俺は今まで、自分の人生をずっと人任せにしてきた。大事なことでさえ、自分で選択せずに生きて来たんだ」 「そうだね……だから言ったろ? あんたが決めるんだって」 「そうか。最初からそう言ってたな、おまえは。あの時は、なんで俺発信だって思ったんだが」 「意外と……不器用だから……ま、そんなあんたに惚れた僕も僕だけど」  自嘲するように笑ってみせる。みっともない姿を晒しながらも、相馬は駿矢を求めていた。駿矢も、はっきりしない相馬に腹を立てながら、必死に手を伸ばしていたのだ。駿矢も言うほど器用じゃない。 「何を失っても構わない。そう言ってくれたな」 「ああ。言った……ずっと、そう言いたかった」 「ありがとう……」  享祐が演じる相馬は僕をもう一度抱きしめてくれた。今度は優しく、包み込むように。 「俺、文無しだし生活力ないぞ」 「大丈夫だよ。何とでもなるから」 「ゲイってバレたら、おまえ仕事なくなるんじゃないか?」 「そんな仕事なら、こっちから願い下げだよ。僕は生活力あるから心配いらない」 「おまえって……タフだな」 「知らなかった?」  洟を啜りながら、僕は答える。目の周りは腫れてるし、顔も涙でぐしょぐしょだ。目の前にカメラがあるけど、これアップはキツイな。 「そうだな。知ってたかも……俺はそういうおまえにぞっこんなんだ」 「相馬さん……」 「もう逃げるのはやめだ。覚悟しろ。俺はおまえを離さない。どんなになっても一緒だ」  抱き合ったまま、僕らは視線を合わす。それから僕は静かに瞼を閉じた。お互いの細い息がかかると、享祐の柔らかくて温かい唇が僕のそれを覆ってきた。  うっとりとしながら、このままずっと、永遠に時が止まったらいいな、なんて考えていた。
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