ダダ漏れヤンキーの半魚人

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小学生の頃かな?確かにそんな話をした。 環は相棒じゃない方が良いって言ったな。 そう…あん時小学生のクセにちょっと面倒くさい言い方したんだよ。半魚人、みたいな。いや相棒より良い半魚人ってなんだ。 分かってることは、環はあの頃にはすでに俺のこと好きだったんだなぁってことか。 「……んで、その環はなにしてんだ?」 俺はうす暗い廃工場の中、あちこちの穴から入る夕陽の明かりに照らされた幼馴染を見つめた。 頬には殴られた跡。 制服は薄汚れ、ネクタイが外れそうになっている。壁際に置かれたパイプ椅子に荷物を縛るビニール紐で括り付けられていて、珍しくぐったりとしていた。なんとも哀れな姿だ。 これはあれだ。昔みたヤンキー漫画の一場面みたいだ。 いや実際今正にそういう状況なんだけど。 環を囲むように5人、学生服を着崩した男が俺を睨み付けている。 「この間は世話になったからなぁ」 環の背後に立つ男達は様々な箇所にケガの跡が残っていた。フム。世話になった……か。世話をした覚えはないけど、最近絡んでくる奴等……とか? なんかバラバラにエンカウントするから仲間とは思わなかったな。 いや同じ高校とか?というか、本当にこいつ等いつも絡んでくるやつか? 「アツはヒトの顔覚えらんないからな」 そうそうそう。俺の他人への興味は薄い。よって顔はほぼ覚えない。名前だってあやふやだ。 「……っふざけんな!!」 怒鳴り散らす男に冷めた視線を送る。 だって仕方がないだろう。お前の顔を覚えた所でなんの役に立つんだよ。 そんなんならこちとら英単語一つでも覚えてぇんだわ。 「英単語だあ?真面目ぶってんじゃねぇぞ」 真面目ぶってるもなにも、俺は普通に真面目なんだよ。真面目に大学目指してんだよ。勉強舐めんじゃねぇぞ。 俺にはな、好きって言ってくれるヤツがいんだよ。 阿呆な俺だってやれることはなんでもしたいんだよ。 駄目でも駄目じゃなくてもそいつが望むんなら俺は差し伸べられた手を握りたい。 そういう努力をしたいんだよ。 「何言ってやがんだ?!」 うるせぇな。怒鳴るんじゃぇ。 こーゆー漫画的展開がお望みなら、俺のセイシュンをお前も感じろよ。 「青春だぁ?!女にうつつ抜かして何言ってやがる!今の状況分かってんのか?てめぇの親友人質に取られてるんだぞ?!」 俺はセイシュンの相手を女なんて言ってないぞ。勘違いにも程がある。 俺が言ってるセイシュンの相手は、頭が良くて、顔も良くて、最近告白されて滅茶苦茶戸惑っているけど、お互い切磋琢磨して「色々」学んできた奴だ。 性別なんか関係なくて、ずっと一緒にいたいって思える人間なんだ。
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