363人が本棚に入れています
本棚に追加
/454ページ
昔は、お兄ちゃんと私はとても仲が良かった。
いつも家では一緒に居た。
お兄ちゃんにべったりな私を、両親は呆れて見ていたくらい。
いつの頃か、私達はお互いを少しずつ避けるようになっていた。
何故、お兄ちゃんが私を避けるのか分かっている。
同じ理由で、私もお兄ちゃんを避けていたから。
私は風呂から上がると、廊下を歩きながらリビングを見た。
お父さんも帰って来たのだろう…。
あの女と、お父さんが楽しそうに話す声が聞こえて来る。
あの女もお父さんも大嫌い!
いなくなっちゃえばいいのに!
私は早足で階段を上り、自分の部屋に駆け込んだ。
何故だろう?
涙が溢れて来た。
悲しくて悲しくて…。
泣いていた。
きっと、お母さんが泣いてるからだ…。
お母さんが泣いてるから、私も悲しいんだ…。
昔なら、こんな時は決まってお兄ちゃんに泣き付いていただろう。
けど、今は出来ない。
あんなに一緒に居た私達家族…。
お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも…。
今の私にとってはすごく遠い人なんだ。
もう一度だけ昔に戻りたい…。
最初のコメントを投稿しよう!