プロローグ1(明音)

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昔は、お兄ちゃんと私はとても仲が良かった。 いつも家では一緒に居た。 お兄ちゃんにべったりな私を、両親は呆れて見ていたくらい。 いつの頃か、私達はお互いを少しずつ避けるようになっていた。 何故、お兄ちゃんが私を避けるのか分かっている。 同じ理由で、私もお兄ちゃんを避けていたから。 私は風呂から上がると、廊下を歩きながらリビングを見た。 お父さんも帰って来たのだろう…。 あの女と、お父さんが楽しそうに話す声が聞こえて来る。 あの女もお父さんも大嫌い! いなくなっちゃえばいいのに! 私は早足で階段を上り、自分の部屋に駆け込んだ。 何故だろう? 涙が溢れて来た。 悲しくて悲しくて…。 泣いていた。 きっと、お母さんが泣いてるからだ…。 お母さんが泣いてるから、私も悲しいんだ…。 昔なら、こんな時は決まってお兄ちゃんに泣き付いていただろう。 けど、今は出来ない。 あんなに一緒に居た私達家族…。 お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも…。 今の私にとってはすごく遠い人なんだ。 もう一度だけ昔に戻りたい…。
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