プロローグ1(明音)

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いつの頃からだろう…。 私とお兄ちゃんが、普通の兄妹と違うと思ったのは。 別に、特別何かが有ったわけじゃない。 ただ、そう感じるだけ。 お兄ちゃんの名前は、市川雄大(いちかわゆうだい)。 歳は19歳で大学生。 凄く、勉強が出来て。 有名私立大学の法学部で、将来検事になるって本人は言っている。 それは、まだ夢なのだけど、お兄ちゃんならそれを絶対に実現出来る。 そんなお兄ちゃんは、私にとって自慢の兄だった。 お兄ちゃんと私は二歳しか歳が離れてないから、子供の頃はよく喧嘩をした。 だけど、謝るのはいつもお兄ちゃんの方からだった。 いつも私の側に居てくれて、たくさん私の事を守ってくれた。 子供の頃は、大人になったらお兄ちゃんと結婚するって、言ってたっけ? 子供だったんだろうな…。 今はあの頃みたいに、私の側にいつもお兄ちゃんは居てくれない。 あの頃みたいに、もう守ってくれない…。 いつものように私は食事を済ませ、リンビングのソファーに座った。 そして、テレビの電源を入れた。 子供の頃からずっとそうやって過ごして来た。 別に部屋にだってテレビは有る。 だけど、よっぽど見たい番組が無い限り、私達家族はこうしてリビングでいつも一緒に居た。 テレビの主導権は、ほとんどお母さんに有った。 だから、お父さんは野球の始まるシーズンになると寝室に篭っていた。 でも、終わるとすぐ私達の元に戻って来る。 毎日、笑いが絶える事は無かった。 家族が自慢だった。 宝物だったと思う。 私は、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも大好きだった。 この家の家族で有る事を誇りに思っていた。 今のリビングは… 笑い声は聞こえ無くなった。 なんでだろう? 私、この場所で笑えなくなった。 きっと、お母さんがいなくなったからだね。 あの頃は、どんな事でも楽しくて仕方なかったな。 家族は、誰か一人でも欠けたらだめなんだね。 幸せなんて、すぐ壊れてしまうくらいに脆くて。 大切にしても守れない…。 どんなに頑張っても、失ってしまうもんなんだよね。
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