プロローグ1(明音)

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「私そろそろ部屋戻るよ」 私はお兄ちゃんにそう声を掛けると、ソファーから立ち上がった。 「もうじき涼子さんが帰って来るから?」 お兄ちゃんはテレビから視線を外す事無く言った。 そう…。 あの女が帰って来る。 仕事が忙しいのか、毎日23時を回るくらいの時間に、あの女は帰宅してくる。 私はお兄ちゃんに特に何も答える事無く、リビングを後にした。 自分の部屋に戻りしばらくすると、玄関の扉が開く音が聞こえた。 帰って来た。 毎日思う。 ここはあなたが、帰って来る場所じゃない。 私はベッドで少しまどろんでいた。 部屋をノックする音に、少し驚き目を覚ます。 「はい」 そう返事すると、扉を開いたのはお兄ちゃん。 「風呂空いてるけど…早く入れよ、もう遅いし」 お兄ちゃんの言葉で私はスマホを触り、時間を見る。 もう、深夜の1時を回っていた。 お兄ちゃんはそれだけ言うと、自分の部屋に戻って行った。 横に有る、お兄ちゃんの部屋の扉が閉まる音が聞こえて来た。
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