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「私そろそろ部屋戻るよ」
私はお兄ちゃんにそう声を掛けると、ソファーから立ち上がった。
「もうじき涼子さんが帰って来るから?」
お兄ちゃんはテレビから視線を外す事無く言った。
そう…。
あの女が帰って来る。
仕事が忙しいのか、毎日23時を回るくらいの時間に、あの女は帰宅してくる。
私はお兄ちゃんに特に何も答える事無く、リビングを後にした。
自分の部屋に戻りしばらくすると、玄関の扉が開く音が聞こえた。
帰って来た。
毎日思う。
ここはあなたが、帰って来る場所じゃない。
私はベッドで少しまどろんでいた。
部屋をノックする音に、少し驚き目を覚ます。
「はい」
そう返事すると、扉を開いたのはお兄ちゃん。
「風呂空いてるけど…早く入れよ、もう遅いし」
お兄ちゃんの言葉で私はスマホを触り、時間を見る。
もう、深夜の1時を回っていた。
お兄ちゃんはそれだけ言うと、自分の部屋に戻って行った。
横に有る、お兄ちゃんの部屋の扉が閉まる音が聞こえて来た。
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