応えられない気持ち

12/19
前へ
/454ページ
次へ
ショッピングモールの中に有るレストランに入った。 味は良くも悪くも無い。 私はロースハムのサンドウィッチを頬張っていた。 お兄ちゃんはカツカレーを食べている。 「お兄ちゃんとこうやって過ごすの本当に久しぶりだね?」 私は自然と頬を緩ませていた。 「そうだな…。久々にお前の顔をまともに見たような気がする」 そう言われ、私も久しぶりにちゃんとお兄ちゃんの顔を見たな、と思う。 「また、たまに来ようよ」 私はそう言った。 特に深い意味が有ったわけでは無い。 お兄ちゃんは少し当惑した表情を浮かべていた。 「そうだな」 少し間があって、そう言ってくれた。 レストランの中は暖房も効いていたし、外の日差しが差し込んでいたのでとても温かかった。 私は、ゆっくりと進む時間の流れを感じていた。 最近は、お兄ちゃんとは殆ど会話が無く、顔を合わせると気が重く感じたが、 今日はそうでは無かった。 家ではないからだろうか? 少し兄妹で有るという事を忘れられた。 「コーヒーか紅茶か頼む?」 お兄ちゃんはデザートのメニューを私に渡してきた。 「んじゃ、コーヒーにしよっかな」 私は少し迷いそう決めた。 「んじゃ、俺も」 そう、日だまりのように笑うこの人を見ていて、目の前に居るこの人が大好きだと、改めて思った。
/454ページ

最初のコメントを投稿しよう!

370人が本棚に入れています
本棚に追加