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その後の帰り道。
車内はずっと静かだった。
どちらも口を開く事は無くて、
買い物に行く事さえ忘れていた。
家に帰って来てから、
それを思い出した。
もし途中で思い出していても、そんな事を言い出せる雰囲気では無かったけど。
お腹が空いたら、インスタントのラーメンでも食べよう。
お兄ちゃんも、勝手にそうするだろう。
そう思い、自分の部屋のベッドに寝転んだ。
暫くして、私は思い出し、床に置きっぱなしの鞄からスマホを取り出すと、電源を入れた。
電源を切っていた間に佐山さんからの着信は、無かったみたいだ。
少し考えたが、佐山さんにこちらから電話を掛けた。
何回かコールが鳴り、佐山さんが出る。
「電話くれたよね?
ごめん、ちょっと寝てて出れ無くて」
そう、嘘を付いてしまう。
『そうなんだ』
佐山さんはその事に対して、
特に疑問を抱いた様子は無かった。
「うん…」
『電話したのは、今日、夜時間無い?それ訊きたくて。
少し会って話したいんだ』
「あ、うん…」
特に断る理由も無かったので、私はそれを了承した。
21時を回った頃、佐山さんは車で私の家迄来てくれた。
私が佐山さんの車の中に乗り込んだと同時に、
佐山さんは謝ってきた。
「今日は本当にごめん!」
私の方に体を向けて、深く頭を下げていた。
「えっ、うん。気にしてないからいいよ」
私は笑顔でそう言った。
というより、そうとしか言えなかった。
ここまで、深く謝られたら。
「今日の事もそうだけど、少し話そっか?」
佐山さんはそう言うと、車に再びエンジンを掛けてゆっくりと走らせた。
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