応えられない気持ち

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「俺も昼に電話した時ちゃんと説明したら良かったんだけど、焦ってて。 あの後、すぐに吉村が入院してる病院に行ったりで…。 あの事が有った後だったから明音ちゃん誤解してるんじゃないかな?って」 「えっ?あの事?」 私は佐山さんに、視線を向けた。 佐山さんのいうあの事って、 もしかしたら、あの女性からの電話の事だろうか? 「あの時、電話が誰からか見たでしょ? ごめん、なんか言い方悪いね」 「―――玲奈(れいな)さんって人だった。 読み方合ってるのか分からないけど」 私は、ポツリと口にした。 なんだか、真実を知るのが怖いのか、ちょっと躊躇ってしまう。 「れいな、で合ってる。 玲奈は前に付き合ってた子なんだけどね。 今でも仲はいいんだよね。 あっ、でも向こうは今ドイツに居るから会ったりはしてないけど…」 「大丈夫。佐山さんの事疑ってないから。 それに、友達としてなら仲良くしてても気にならないし」 けっこう疑っていたけど、 そう、物分かりの良い振りをしてしまう。 「ありがとう。 でも、少しは妬いて欲しかったな」 「えっ?」 「でも、電話出てくれ無かった時、怒ってるんじゃないかな?ってすごく心配だったけど」 佐山さんはそう言うと、私にそっと微笑み掛けてきた。 私の体を自分の方に引き寄せると、ゆっくりと唇を重ねてきた。 前の時よりも、ずっと深いキスだった。 私は今日したお兄ちゃんとのキスを思い出していた。 佐山さんに対して、罪悪感を覚える。 「明日空いてる?明日今日のやり直しにデートしようよ」 佐山さんは唇を離すと、私の髪を撫でる。 「うん。明日は空いてる。 月曜は予定あるけど」 私がそう言うと、佐山さんはもう一度キスをしてきた。
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