174.ばれなくていいから

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174.ばれなくていいから

「足をひねったのよ。それを気にせず無理な姿勢をしていたから、転んでダーリングに助けてもらったの。ハーイェク、わかった?」 「無理な姿勢ってなんだ」  マーレンが訝しげに、けれど何かを予感したのかリディアを探るように見つめる。  ウィルの手を押さえるために、リディアはしゃがみこんでいた。  足を痛めていたのに、無理な姿勢でいた。それを理解しウィルは顔は顔を歪ませた。全然気づかなかった。 「しゃがんでいたら、足がしびれて」 「なんで、しゃがむんだ。こいつの前でしゃがんで、何をしていたんだ!」  マーレンがいきなりスイッチが入ったようにリディアに詰め寄りだして、今度はリディアが困惑を見せる。 「ちょっと、ハーイェク。何?」 「まさかお前、こいつに……」 (あー)  男のウィルは、マーレンが何を疑ったかわかる。が、それをリディアにいったらマーレンだけじゃなく、自分にまで絶対口を利いてくれなくなる。  マーレンの悔しそうな顔に、リディアはまだ気づいていない。  これ、わからせないほうがいいだろう。 (そりゃ……してくれたら最高だけどさ)  あ、やばい。  想像したらちょっと男としての生理的な反応が起きそうになって、ウィルは慌てて意識を逸らす。  こんなことで、リディアに嫌われるわけにはいかねーし。 (……落ち着け、俺)    リディアの首を傾げる様子を見て、早口で話題を変える。
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