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第1章 1.発端
――薄黄色の日差しが切妻屋根に反射している秋の夕刻。
あと一時間もすれば、橙色の空は、すぐに青から漆黒に変わるだろう。
リディアは、目前に佇む旧集会所の見取り図から顔をあげて、自分を取り囲む男たちに目を向けた。
「部隊を二手に分けます」
それぞれが、鋭い眼差し、油断のならない気配、そして好戦的な性格を持っている。
呑まれるな、目で、声で、気配で、そして内容で従わせろ。それが求められていること。
今回の作戦の実質の指揮官は自分だ。
「ボウマン師率いる一隊は正面入口から突入、大広間まで急進し敵を制圧。支援部隊は後方のここから進入」
リディアは、見取り図上の長方形の建造物の正面入口の正反対にあたる再奥の壁を、トンと指で叩く。
「裏手の壁を破壊し侵入、回廊を抜け、大広間後方に回る」
「後方部隊に人員を割きすぎじゃないのか」
不精鬚を撫でながら胡乱げに図を見下ろすのは、リディアの父親ほどの年齢の経験の長いガロ。
リディアは、自分の読みに迷いを見せないよう、淡々と口を開く。
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