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151.院生たち
ケイはメグの方に背を向けて、すぐにウズラの卵大の大きさの魔法晶石を五つ、鞄に入れる。
自然に笑みが口元に浮かぶ。めったに誰にも見せない本気の笑み。
(これで次の授業は、僕が一番だよ)
あの女、リディアはどんな顔をするだろう、と思いながら、ケイはクスクスと思わず笑い声も立ててしまう。
(大体、騒がしくって出来が悪いのばかりだから、僕のこと見ないんだ)
自分ができるからって、そのままにしとくなんて信じられない。ここまで僕がしてあげてるんだから、今度こそ注目してよね。
(ああそれとも。わざと僕のこと、無視してるのかも)
気になっているのに、気を引こうとして、無視してる。そうかもしれない。
だったら――特別に授業をしたいって言ってきても、すぐに頷かない。
だって、もっと僕のことだけ見てくれないと。僕のことだけ特別扱いで、僕だけを見てくれなくちゃ。
「――あれえ、ケイ来てたの?」
いきなり院生室のドアが開いて、ケイは振り向く。
すでに冷蔵庫のドアは閉めてある、魔法晶石はケイがもらったとは誰も思われない。疑われるとしたらメグだろう。
「なんだ、ケイがいるなら、外、出なければよかった」
「どこに行ってたの?」
「買い出し。これからこもるからさ」
騒がしくなったのは、これからの実験作業にこもるための食糧買い出しに出ていた院生がもどってきたから。いきなり修士の学生が五人も増えて、騒がしくなる。
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