153.嫉妬は可愛いね

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153.嫉妬は可愛いね

「そういえば、ケイのところって女の先生だよね」  不意にアイスを食べ終えた女子の一人が言い出して、ケイは驚いてわずかに肩を揺らす。  なんでそんなことを言いだすのか、警戒心が宿る。 「魔法学科なんてほとんど女の先生じゃない?」 「そうだけど、助教の先生。ハーネスト先生って言ったかな、まだ十代みたいな感じ」 「へえ。若作り?」 「そうじゃなくて、なんでも魔法師だったから十代で修士行けたらしいよ」 「じゃあ、まだ十代? 学生みたいなもんじゃん。そりゃ若いね」  ケイが話さなくても、勝手に女子達が話し出す。 「ていうか、ケイに教えるなんて羨ましいー」 「そうなんだよね。ケイと同年代だったら、絶対仲良くなっちゃう。ケイ、平気?」 (あ、そういうこと?)  ケイは、彼女たちがどうしてそんなことを話題にしたのかようやくわかった。 (なーんだ、嫉妬か)  ケイはここで笑って平気と答えるか、ほんの僅かな間、内心で逡巡する。そして、顔を曇らせて微苦笑を浮かべる。 「どうしたの、ケイ?」 「うーん。たぶん、先生に僕、好かれちゃったみたい」  皆がざわめく。ケイは自分が今最も注目を浴びて、関心を集めていることに満足する。 「僕のこと特別だって言うんだ。魔法も僕が一番使えるからさ」 「そうなんだ」「わかるー」 「でも、特別扱いはよくないよね。付き合ってほしいっていうから、断ったんだ」  えええ、と皆のどよめきと、非難の声が上がる。もちろん非難は自分に対してじゃない。あの女教師へのものだ。 「でも秘密にしておいてね。先生に悪いから」 「それっていいの?」  うんって頷いて、ケイは困ったような笑いを作って、顔に浮かべた。 (秘密にしておいて、って言われて秘密にする女子なんていないよね)  ケイは、また自然に口元をほころばせて笑みを浮かべた。女子たちが、ケイを気遣いながらも、また別の話題で盛り上がる。  その輪に入ってこないメグが自分をじっと見ていたことに、ケイは全く気づかなかった。
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