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156.処世術
「エルガー教授! 昨日はありがとうございましたあ。素敵なマンションでしたねぇ」
「そうねえ。でも築年数がねえ。中央地区の新築を狙いたいのよ」
「さっすが、教授ですわあ! 私にはお高くて手が出ないですものお。また次にマンションを見に行く時にはご一緒してもいいですかあ?」
(――何、あれ――?)
何か気持ち悪いもの見た。
ネメチ准教授の教授への態度は、部屋のドアをノックしたリディアを凄まじい剣幕で怒鳴ったときとは大違いだ。
「――お前に足りないのは、あれだな」
「わ」
後にはマーレンがいた、背が高いのにリディアの背後を取るから壁のよう。
「何?」
「ネメチ准教授は、エルガー教授がマンションを購入するので、下見に付き添っているようです。昨日、日曜日は一日共に過ごされたようですよ」
マーレンから一歩、いや数歩下がり丁寧に説明をしたのは、ヤン・クーチャンスだ。
「マンションの下見に付き添い? 日曜日に……」
「出世のためならそれぐらい当然だ」
リディアは、頭を振った。いやだとも信じられないともどちらの意味でもいい。
それで、ネメチ准教授はエルガー教授から授業を免除されましたか。その代わりに准教授がやるはずの魔法学概論の授業がリディアに回ってきたわけですか。
「お前は、処世術を知らない、というよりは下手くそだ」
「――そうね、そうね」
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