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157.エルフ年齢?
あなただって、世間を知らないじゃない。そう言いかけてリディアはやめた。
マーレンの目は、妙に真剣だ。
「宮廷では生き残れねぇな。まあいい」
眉を潜めた、よくない。何、宮廷?
「単純なほうが俺は好みだ」
何、なんか怪しくなってきた。聞き流すことにしよう。
「教授にはすでに気に入られていないからいいの」
予算の件で皮肉を言った後から、会議のたびにいやみを言われるし、大量の仕事が回ってくるし、今まではリディアが作った資料は丸無視だったのが、「やり直し」の言葉と共に突っ返される。どこを直すのか聞いても「自分で考えなさい」だ。生徒かよ。
顔が険しくなると、マーレンがフンと鼻を鳴らして、リディアの眉間をぎゅっと押してくる。身長差があると、こういうことされるから!
「やめてよ!」
「皺が取れなくなるぞ、うちの母上のように」
マーレンの手を払ったリディアは、ぎょっとして眉間を押さえた。
「お母様、お幾つ?」
「人間年齢で言うと三十五だ」
え? マーレンはいくつ? 人間年齢? えーと、エルフ年齢で計算するといくつ?
「気にするな。俺は人間年齢で二十三だ」
人間年齢の十二歳でマーレンを産んだの? それはおかしい。エルフ年齢に換算しても、時間の流れも人間とは違うだろうから、もういいや。
「どちらにしろお前より俺が年上なのは変わりない、そしてまあ俺としては丁度いい」
リディアは、皺が寄るのも構わず盛大に眉間をしかめた。
「その顔、かわいくねぇぞ」
嫌なこという男子ですね!
いいや、“子”ではない。
エルフ年齢でも人間でもね、かわいくない成人男性だ。
「まあ……日曜日に教授にサービスしているより、あなた達に授業をしていたほうがいいけどね」
一回の授業を作るのに、土日丸々潰すけどね。二日はかかるけどね。
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