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160.ウィルの胸のうち
「ギルモア、彼を保健室に連れて行って」
「はい、でも」
「まずは、手当てと診断をしてもらって。話は後よ」
「はあーい」
不満げなミユに、何かを言いたげなケヴィン。
ウィルは立ち尽くしたままだ。
リディアはウィルの前に屈んで、殴ったであろう彼の右手を掴む。
「何、してんだよ」
「あなたは、怪我はしていないわね。でも後から痛みがくるかも」
「ほっとけよ!」
ウィルが目を尖らせて、手を振りほどく。
「そうだ。ほっとけよ、馬鹿者は」
マーレンの突っ込みは流す。
「ダーリング、手当てしましょう」
「……いいよ!」
「よくないの」
怪我をしたのはケヴィン。被害者もケヴィンだ。
ただ、心の傷のほうが深い場合もある。
リディアはウィルの手首を掴んで、歩き出した。
彼は一瞬、目に何かの感情を強く宿し唇を噛み締めたが、結局何も言わず、大人しくついてきた。
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