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163.アンタのせいじゃない
ウィルが連れていかれたのは、リディアの研究室の向かいの空き教室だった。
リディアは胸に下げたIDカードに内蔵されている電子キーでドアを解錠して、前方のスクリーンを囲むようにコの字型に並んでいる椅子の一つにウィルを座らせた。
「ちょっと待っていて」と、彼女はウィルに告げて出ていく。
(なんだよ、な)
なんで、あんな間の悪いときに、リディアは来たのか。
(――かっこ、わりぃ――)
リディアのことで、挑発されてケヴィンの狙い通りに手を出して。皆の前で醜態晒して、ミユに言われて――リディアに全部見られて、事態を収拾させた。
「かっこわりー」
口に出してみて、ウィルは呻いて俯いた顔を両腕で抱えた。
(アイツ、間が悪いんだよ)
何でそういうときに来るんだよ、もっと――そうじゃない、違うときに来ればいいのに。
ミユのこととか、ケヴィンのこととか知られたくなかったし、ミユにああいうこと言われているところなんて、見られたくなかったし。
(そもそも、アイツがケヴィンに目をつけられるから!!)
それが元凶じゃないか。
「ちっくしょー。……リディアの、バカ」
呟いて、ウィルは口を押さえる。
(嘘だよ。――アンタは悪くない)
そんな事思ってない。悪いのは全部、俺だ。
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