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165.見ていた?
求める答えじゃないけれど、少しだけケヴィンより優先されていると思い、ウィルの胸は高鳴り、でも情けないところを見せたからだと、今度は地面に沈みたくなる。
リディアは、まだタオルを結ぶのを苦戦していた。
生地が分厚いから無理じゃね?
「うまく結べないね。しばらく、押さえているしかないかな」
リディアはそう言って、アイスノンで冷やすウィルの手を膝に下ろして、自分の手を重ねる。
「……っ」
(な、なんだよ……)
この……手は、なんだ?
タオルの端を押さえながら、ウィルの指も包み込んでいるリディアの手。
自分の膝の上に、なんで……リディアの手があるんだ。
そういうこと、するなって言ったはずなのに、でも……口に出して言うことはできない。
(嫌じゃねーし、もちろん)
ああ、もう。
何の話だったのか、何の目的でリディアがここに連れてきたのか、考えられなくてわからなくなる。
(俺が自分で押さえると言えば、いいんだけど)
――別にリディアが押さえている必要はない、ウィルの片手はあいているのだ。
でも、もちろんウィルはそれをわざわざ言うつもりはなく、リディアの頭を眺めていた。
(ちっちぇ……頭)
髪の根元のほうが、少し紅色がかかった金髪で、それがだんだん薄くなり全体として、淡い蜂蜜色になっていく。
「――ねえ、ダーリング。……女の子には、怒鳴ってはだめよ」
思わず頭に触れようとしていたのを見計らったかのように、リディアから声がかけられる。
ウィルは、見下ろすリディアの頭上に撫でかけた手を止め、そのままの姿勢で固まる。
自分は何をしようとしていたのか、という動揺と、リディアの放った言葉。
さっきまでのことが急速に蘇る。
「リディアは、……全部、見ていた?」
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