169.ばれたけど

1/1
前へ
/367ページ
次へ

169.ばれたけど

 リディアがついていてくれて、補習をしてくれて希望が見えた。何よりも、今は自分の魔法云々よりも、リディアにまつわることが一番気になっている。  他の男がリディアに関心を向けているって、そのことのほうが気になるんだ。 「あのね、痛いところを突かれた時、口や暴力で返しちゃうとばれちゃうからね、弱点だって。だから平然としていたほうがいいの」 (あー、確かに……ケヴィンにはばれた)  リディアのことを言われて、カッとなって我を忘れた。  あの時、ケヴィンは薄ら笑いを浮かべていた。ウィルがリディアに好意がある、本気だと知ってケヴィンは益々興味を持った。    ――リディアは、ウィルの魔法が使えないことを気遣っていたが、ウィルはそれよりも他の男がリディアに絡んでくるのが、気になって仕方がない。  二人の会話が噛み合っていないことにウィルは気がついていたが、そのまま話を続ける。  この空間に、もっと二人でいたいから。   「だからね。行動で見返してやらないと」    リディアはウィルの顔を見上げて、優しく微笑んだ。はじめて見せる、穏やかな笑み。 「ウィル、感情制御覚えようね。絶対に魔法、使えるようになるから」   リディアは、確かに名前を呼んだ、”ウィル”と。  そんな笑みを見せられたら、そんな風に名前を呼ばれたら。    ――何より、その握りしめてくる手。  リディアは、無意識なのか意識した上でのことなのか、わからない。    けれど、もう歯止めがきかなくなるだろ。   気持ちが抑えられなくなる。 (ほんともう、煽られてばかりで……)  ウィルは、リディアを見下ろして。    握られてない、もう片方の手を伸ばした。
/367ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加