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169.ばれたけど
リディアがついていてくれて、補習をしてくれて希望が見えた。何よりも、今は自分の魔法云々よりも、リディアにまつわることが一番気になっている。
他の男がリディアに関心を向けているって、そのことのほうが気になるんだ。
「あのね、痛いところを突かれた時、口や暴力で返しちゃうとばれちゃうからね、弱点だって。だから平然としていたほうがいいの」
(あー、確かに……ケヴィンにはばれた)
リディアのことを言われて、カッとなって我を忘れた。
あの時、ケヴィンは薄ら笑いを浮かべていた。ウィルがリディアに好意がある、本気だと知ってケヴィンは益々興味を持った。
――リディアは、ウィルの魔法が使えないことを気遣っていたが、ウィルはそれよりも他の男がリディアに絡んでくるのが、気になって仕方がない。
二人の会話が噛み合っていないことにウィルは気がついていたが、そのまま話を続ける。
この空間に、もっと二人でいたいから。
「だからね。行動で見返してやらないと」
リディアはウィルの顔を見上げて、優しく微笑んだ。はじめて見せる、穏やかな笑み。
「ウィル、感情制御覚えようね。絶対に魔法、使えるようになるから」
リディアは、確かに名前を呼んだ、”ウィル”と。
そんな笑みを見せられたら、そんな風に名前を呼ばれたら。
――何より、その握りしめてくる手。
リディアは、無意識なのか意識した上でのことなのか、わからない。
けれど、もう歯止めがきかなくなるだろ。
気持ちが抑えられなくなる。
(ほんともう、煽られてばかりで……)
ウィルは、リディアを見下ろして。
握られてない、もう片方の手を伸ばした。
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