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173.謝罪
「なあ、リディア。座れよ」
ウィルが言うと、リディアは「いい」と断る。さっきまでいい雰囲気だったのに、こいつのせいだ。ウィルはマーレンを後ろから睨む。
「その前に、互いに罵倒したことを謝って。そして握手をして」
「はあ?」「なんで」
「根拠のない汚い言葉よ。明日からまた机を並べるのだから、謝って。二度と言わないと互いに誓って」
「俺様は口にしたことを否定しない」
「マーレン・ハーイェク・バルディア!」
リディアがぴしゃりと名を呼ぶ。その迫力にマーレンが思わず口を閉ざす。
「王族だからこそ、汚い言葉は慎みなさい。あなたは国の顔なのよ。そして、間違いを認める勇気を持ちなさい」
「……」
「ハーイェク」
「悪かった」
最初マーレンが誰に謝罪しているのかわからなかった。顔を背けて、壁の方を見て口をモゴモゴ動かすだけ。
でもリディアがこちらを見て促すから、え、謝られたのか、とわかる。
「で、ウィル・ダーリングは?」
「え、俺? ああと、ええと……悪かったよ」
「握手」
リディアの言葉に、ウィルの方からマーレンに歩み寄る。
マーレンは不貞腐れて耳がピクピク痙攣していたけれど、ウィルが手を差し出して、「ん」と促すと仕方なく握ってきた。
「私も悪かったわ。軽率な行動で二人に心配をかけたわ。ごめんなさい」
そしてリディアが頭を下げる。その行動によりも、軽率な行動ってなんだ? とウィルは顔に苛立ちを募らせる。
俺と二人きりになったこと? 自分を慰めたこと? いい雰囲気になったこと?
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