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175.よびだし
「まあ、ええとマーレン、いいだろ。それより」
「よくねえ。てめえ殺して――」
「マーレン・ハーイェク。いい加減にしなさい」
リディアのたしなめる声に、マーレンの耳がピクリと動く、そしてチッと舌打ちをしておとなしくなる。
なんかおもしれー、と言ってはだめだろう。ウィルは口を閉ざす。
「手当をしていただけよ。ところで、ハーイェク、どうしたの? 何か用があったのでしょう」
リディアの問いに、マーレンは不承不承といった様子で口を開き、ウィルを指差す。
「こいつを学科長が呼んでる」
「は?」
「あのうるせえ女が保健室で騒ぎまくって、学科長に話が行った」
「つまり、ダーリングを学科長が呼んでいるってことね?」
リディアは早く言ってよ、という顔でマーレンに念を押し、ウィルに視線を向けた。
「わかったわ。ハーイェク、教えてくれてありがとう。ダーリング、行きましょう」
ウィルは「行きましょう」と言われて返事に困る。
え、とか、何で来るの、とか。リディアの気持ちは嬉しいけど、それは流石に恥ずかしいだろ。
「なんでお前が行くんだ。こいつは糞の後始末もできねえガキなのか」
「ハーイェク、お口」
注意をされたマーレンが黙り、リディアといえば、ようやく机から手を離し、そろりと足を踏み出そうとしていた。
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