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177.マーレンの優しさ
ウィルを見送り、リディアは息をついた。
「呆れたな」
フンと鼻を鳴らしたのは、マーレン。そこに蔑みの眼差しはない。ウィルとは馬が合わないのか、または学友としてライバル視しているのだろうか。
「マーレン、そういうこと――」
「ヤツじゃねえ。お前のことだ」
リディアは、机に手をついたまま半身だけ振り返る。
「――座れ」
「ハーイェク」
「いいから、座れ」
マーレンは、椅子の背もたれを掴むと、乱雑に椅子を引き出しリディアの背後に置く。椅子の脚と机の脚がぶつかり、騒がしい金属音を立てる。
「そんな足で履かれても嬉しくねえ」
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