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179.王子様はいつも必死
ずいっとリディアの顔の前に押し付けられた箱を見て、リディアは顔を仰け反らせたが、手は触れずにマーレンの顔を見上げる。
「ハーイェク、これって」
「言っただろうが!」
何を、と聞きかけたリディアは、黙ったまま怒ったように顔を険しくさせているマーレンの顔を見つめる。
確かに、せっかくの贈った物をそぐわない場で使われて負担を強いることになっていたら、リディアだって心が痛むし、むしろ申し訳なく思う。
「ハーイェク。これは、あなたのくれた靴のせいじゃない」
「だからなんだ」
リディアは、顔を伏せて考える。それから正直に気持ちを伝える。
「本当に。ヒールが取れてしまって、困っていたからあなたの靴があって助かったの」
でも、最初は躊躇した。靴がない、帰り道に困る。眼の前には未使用の靴。
一回だけ、ただ借りるだけ、そう思って足を入れた。
でもわかっていた。借りるだけなんて自分だけの言い訳だ。
もっと言えば、未使用のままロッカーに入れておいても、貰っていないことにはならない。使っていないから、生徒から何も貰っていない、そんなふうに言い訳なんてできない。
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