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187.尊敬します
「恐れ入ります。では、お任せいたします」
「また後で報告をいれますよ。――ところで」
エレベーターホールまで案内するリディアの足に、アーサーは目を向ける。
「その足は、うちのバカ息子ですか?」
「いいえ。私の不注意で転んだだけです」
リディアの足は、固定がなされて、来賓用のスリッパを履いている。誰もが怪我をしているとわかってしまう姿。それに気がついてか、彼らもゆっくり歩いてくれる。
「お見苦しい姿を見せてしまい、恐縮です」
リディアが言うと、アーサーは穏やかな瞳でゆるゆると首を振り「お大事に」という。朗らかで人を和ませる会話。リディアのところの教授とは大違いだ。
「この度は、機械の寄贈もありがとうございます」
「いいや。これもうちの息子の仕業です。私が面倒を見ればいいのですが、親子だと距離感が難しい。ご迷惑をおかけし、申し訳ない」
ウィルはそっぽを向いて一言も発しない。
確かに親から自分の事は聞きたくないだろう。明日からまたウィルの対応が少し大変になりそうだ。
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