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190.親子
エレベーターの中で、そっぽを向いて顔を押さえるウィルに、父親は息子の顔を見ないようにしながら、くつくつ笑っていた。
(リディアの、やつ……!)
顔が熱い。
彼女が自分を待っていたことが、嬉しくなかったわけじゃない。
けれど親と一緒の所なんて、絶対に見られたくなかった。しかも、アイツ、親父を見て明らかに嬉しげで、しかも顔を赤くして。……声もはしゃいでいたし、なんなんだよ。
(親父好きかよ? ……馬鹿)
そう思っていたら、突然のあの行動。
腹立たしく怒っていたウィルの目の前で、突然、扉が開いてリディアの心配そうな顔がのぞきこんできていて、心臓が跳ね上がった。
不意打ち過ぎるんだよ。
しかも、ウィルの名を呼んで、励ますようにガッツポーズ。
なにそれ、なんでガッツポーズなんだよ。
(全然、意味わかんねーよ)
なのに、嬉しくなるのは。顔がにやけて、しまうのはどうしてなのか。
「なんだよ」
「いいや、何も言わないよ」
物分りのいい親のふりをする親父に、ウィルは言い返したかったけれど、結局黙ったままでそっぽを向いた。
ケヴィンの家に向かうのは憂鬱だけど、そんな事全然どうでもいい。
それよりもリディアのことばかりで、全然集中できない。
(明日……)
何かがあるわけじゃない、ただ会えるだけ。会うと約束してくれただけ。
なのに、明日が楽しみとか、こんなホントありえねーだろ。
(……ガキかよ、俺)
そう思いながら、ウィルはわざと怒ったように顔を背けていた。
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