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202.バスの中
バスの中は、十代前半ぐらいの音楽を聴いている男子と、仕事帰りらしいスーツ姿の若い女性で、二人ともキーファとは面識がない者達だった。
「あちらに」
キーファの促しで、空いていた一人席にリディアが座り、その後方にキーファも座る。
キーファは話しかけないつもりだったが、リディアがいきなり振り返る。
「あのね、コリンズ。あなたも高度魔力測定受けてみない?」
バスのエンジン音で、キーファ以外には届かない声が訴える。
彼女は、いつも緊張していながらも真っ直ぐにキーファを見つめてくる。
提案を断られそう、言い募る言葉を鼻であしらわれそう、そんな不安を覚えているのではないか。それを恐れていながらも、必死で言葉を探しキーファにぶつかってくる。
だから、こちらも言葉を聞いてもいいと思わされる。聞かなきゃいけないと思わされる。
けれど、今回の内容は――。
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