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204.何も、ない!
「当たり前じゃないですか」
リディアは目を見開いて、それから、そうよね、と自嘲混じりに苦笑した。
「変なこと言ってごめんなさい」
「――ウィルと何かあったのですか?」
「ない。なにもない!」
強い否定。強すぎると、自分で気がついたのだろう。「ないよ、本当に」と彼女は更に重ねる。
キーファはキーファで自分の訊き方に舌打ちをしたい思いだ。もう少し違う聞き方をすべきだった。
「あなたの魔力値、とても高いから、高度測定装置で測ったほうがいいと思う。それに魔石の反応も気になるし。ただ、私の能力では不安だから第三者にも立ち会いを頼もうかと思って」
「誰ですか?」
「まだ頼んではいないの。けれど、ディアン・マクウェル、グレイスランド王国魔法師団の第一師団の団長」
「……エリートですね」
有名人だ、何かと噂のある。しかも、まだ若い。二十五歳で団長を勤め上げている。
どういう関係ですか、と口にしそうになるのを、こらえる。
「そうだけど。たぶん、つなぎを作っておくことは、今後のあなたの有利になると思う。急がなくていいから、実習で会うから少し考えてみて」
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