207.上に立つ覚悟

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207.上に立つ覚悟

「勿論、軍では命令に従うことだけを教える。まだ若いうちは、そこでの常識、考え方を刷り込ませたほうがいいから、敬意を持って新兵に伝えるなんてないし。だから、どの方法を取るかは場と相手によるけど」  そして、と続ける。 「でもね、指示を出す時に、敬意をもっているか、認めている上で出しているのかって、相手には伝わるからね。敬意も無く考えもなければ、指示を与えたのではない。――ただ仕事を押し付けているだけ」  最後の部分には妙に力が入っていた。キーファの顔を見て、リディアは気まずそうに笑った。  それに、と不意に口調が変わる。 「上に立つ時に求められるのは、いざという時に絶対に助けるという覚悟かな。相手に指示を与えて送り出したら、その結果もすべて自分が引き受けないとね。見捨てないって覚悟でいないと。でもこれは――それを叶える実力がないと難しいわね」  強い瞳。  据わっているのとも違う、任務に赴く前の冷静で覚悟を決めたような眼差しだ。
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