5 十年後

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それは、とても蒸し暑い深夜でした。 私は、彼のアパートへ向かいました。 時間的に、団地全てが眠りについている時刻、彼の部屋にも、明かりはついていません。 私は、 私たちの恋路を邪魔をする元嫁(あのおんな)に、ひとつ制裁を加えてやろうと考えたのです。 実はこれまでにも、 彼の持ち物を調べて同じものを購入し、匂わせ写真を合成しアップする、などといったSNS上での小細工はやってきていました。 前回のことがあるので、かなりの精神的ダメージを負わせられるものと期待したのです。 ところが今回、元嫁は一向に音をあげませんでした。どころか、SNS自体をシャットアウトし、鍵垢すら見つけられないのです。 これでは、効力がありません。 私は、苛立ちました。 どんどん自分の行動がエスカレートしていっているのは分かっていましたが、止めることはできませんでした。 これまでの人生で、こんなに思い通りならなかったのは初めてのことだったから。 精神的攻撃が効かないのならば、物理的攻撃と、私はステップを上げてしまいました。 4棟ほどが連なる集合アパートには、各戸の郵便受に部屋番号が書いてあります。 私は、その番号が間違っていないことをスマホライトで確認すると、予め用意していた動物の死骸を放り込みました! え? そんなもの、どこから見つけてきたのかって? うふふ。 調べれば、あるところにちゃあんとあるのです。集められた動物の死骸などは、たいてい区の焼却処分場にいきますからね。 それに私は、わざわざリボンをかけて、バースディカードに模した脅迫状を添付しました。 「あの人と別れろ、でないと大変なことが起こるから」 と。
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