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それから数日。
とうとう、直接対決の日がやってきた。
その日、珍しく内勤をしていた私のところに、彼女はやってきた。
受付のカウンターで、たまたま通りかかった若い男性社員を相手に、みっともないほど髪を振り乱し、ヒステリックにがなり立てていたその女が、彼の嫁だというのは、尋ねずとも分かった。
「あんたが"あーちゃんさん"ね!…」
「ちょ、お客様、少し落ち着いていただけますと」
「どうもこうもないわよっ、あの女が…、あの女が…
ちょっとあなた、ボケッと眺めてないで、何とか言ったらどうなの??
私の夫、返しなさいよっ!!」
概ね事態を察した社員クン(梅木君という)は、女を押し止めつつ困ったように私のチラ見した。
興奮し、激昂しているこの女が、紫倉先生の嫁。憐れなサレ妻ちゃん。
なあんて、醜いんだろう。
産後、女としての努力を100%怠り、食うだけ食ってブクブク太った醜い身体。
今日、久しぶりに外に出るために慌てて付けてきたコスメは流行遅れ。
ファッションも、医者の嫁らしくブランド品で固めてはいるが、統一感がなくちぐはぐで、サイズも合ってない。
CHA〇ELのワンピースなど、後ろのホックがはずれるほどパッツンパッツンで、ブタをますますブタらしく見せるアイテムと化している。
心の中で嘲笑しつつ、私はたちあがり、彼女の目の前に立った。
瞳をうるませ(笑)、フルフルと体を震わせる。
「紫倉先生の...奥様、ですよね」
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