2 公開修羅場

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「はっ?なにバカなこと言ってんの? MRが医者(クライアント)と不倫なんて、この会社のコンプラ、一体どうなってんのって言ってんの。 ちょっと誰か、このバカ女の上司呼んできなさいよ、この女、早くクビにしてよっ!」 「本当に、本当にごめんなさいっ、あっ」 ガシャーンッ!! わたしは、(ブタ)の足に縋るフリをして、懐に忍ばせていたスマホを床にぶちまける。 と同時に、大音量で、幾日かの夜の会話が流れ出す。 『...ろくに夕飯も作らないくせに、権利ばっか主張しやがって... 疲れて家に帰ったって、ブウブウブウブウ、文句ばっか言って、何喋ってるか分からねえ。 たまには人語を喋れっつーの!… ...あいつ、俺の家族にも嫌われてて... であんな酷い女より... 俺だってはやく離婚したい...』 「ああっ、すみません、すみません!」 汚辱にまみれ、ブルブルと震えている(ブタ)の横を這うようにして、私は急いでスマホを拾い上げた。 フフ、どうよ、あーちゃん編集、『しーくんの、アンタへの罵詈雑言セレクション』は。 こんなのを公衆の面前で晒されて、果たして、まだ戦えるかしら? 「本当にすみませんっ、あの、こんなのはきっと、紫倉先生も、こんなのは本心ではないとおもうんです! いつも私に、『 妻には申し訳ないと思っている』って..」 心の中で舌を出しつつ、必死になって謝る愛人を演じる私。 対する(ブタ)は、その、確かに夫と分かる声に、案の定、顔を真っ赤にして、立っているのがやっとの様子。 何故こんな録音があるのか、なんて考えることもできていない。 「くっ...こんなの、......酷いっ」 やがて彼女は、その場から逃げるようにして、オフィスの自動ドアから走り去っていった。
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