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「ちょっとちょっとちょっとちょっと!こういうの困るのよ君、これ君一体どういうこと?」
嫁が飛び出してくとすかさず、ぷりっとした尻を振りながら、フロア部長が駆け寄ってきた。
己の“事なかれ主義”を“リスク管理”といって憚らないこのクソ上司は、厚顔無恥にも、さっきまで奥にいたにもかかわらず、忙しいフリをしてやりすごしていたのだ。
「部長…」
私は潤んだ目を向ける。
「兎に角、ちょっと打ち合わせ室まで来てくれる?そこで事情聴取するから」
「…はい」
私はぎゅっと胸にスマホを握り締め、項垂れて部長のプリ尻の後に従った。
バタン。
自動ドア横の小さな部屋。打ち合わせは、入り口の扉を閉じると、途端に密室になる。
部長は、ドカっと尻を椅子に下ろすと、型通りの説教を始めた。
私は、項垂れて顔を俯かせる。
「君、飛んだことをしてくれたね、まさか、顧客の医者と恋仲に。しかもそれが、不倫だなどと、冗談じゃない」
「でも…私たち、本当に愛し合っているんです!たまたま、出会った順番が違っただけ…」
ドンッ。
部長が、机を叩いて威嚇する。
「何を言ってるんだ君!
愛だの恋だの、高校生じゃないんだぞ!
いいか?これはねえ、我が社のコンプライアンスにも関わる問題なんだ。
君の辞職は勿論のこと、場合によっては賠償請求も…」
くっ、ククッ。
クックックック…
私は、思わず肩を震わせた。折角我慢してやっていたのに、つい、笑いが漏れてしまう。
私が、泣いていないと気づいた部長が、訝しんで顔を覗き込む。
「な、何だ。何か言いたいことでもあるのかね?」
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