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とある森の中、剣の一閃が放たれる。
その一閃はモンスターを切り飛ばし木に叩きつけた。
青年、いや少年とも呼べる人物は、自分ほど大きいその大剣を背負いつつ、モンスターを引きずりながら森を抜けていく。
森の奥の小さな村。少年はそこに向かっていく。
「ほら」
村につくと少年は、モンスターの死体を見せるように投げる。
それを見た村人たちは「おお」と驚きの声を上げた。
「あ、ありがとうございます。討伐していただけるとは」
村長が少年に微笑みながら話しかける。少年は一瞬照れた様な表情を浮かべるがすぐに表情を戻すと。
「……依頼だ。報酬が貰えればそれでいい」
そっと村長から目を逸らした。
「そうですか。ではこちらを」
村長から袋にいくらか入った硬貨を受け取ると、少年は立ち去ろうとする。
「お待ちください。もしよろしければもう一つお願いがあるのですが……」
村長が少年を止める。それに少年が振り向くと、村長の後ろから別の老人が近づいてきていた。
「メ、メル様はワシが! ぐううっ」
老人は腰を擦りながら苦しむ。
「あれは?」
少年は村長に問う。
「彼は『ジライ』さん。君と同じく旅人らしいのだが……」
村長は老人ジライを見る。ジライも村長を見ると大声を上げた。
「こんな小僧に頼らなくても、ワシ一人でメル様を助けれるわ! ……アタタ」
村長はやれやれと首を振る。
「なんでも連れの少女をモンスターにさらわれたとかで。自分一人で助けに行くと言ってはいるがあの通りというわけです」
「そうか……」
少年はジライに近づく。
「爺さん、その子の救出、俺が引き受けよう」
「いいと言っておるじゃろ! それに――」
ジライは少しバツが悪そうな表情をする。
「――依頼するほど金もないわい」
その答えに少年は苦笑した。
「報酬はさっきの村長の報酬でまけてやる」
「ぬ。ぐううっ。わかったわ小僧! ……メル様を頼む」
「ああ」
ジライは折れ、少年に少女救出を託す。
少年はジライにいくつか質問をし、村を出発しようとした。
「待て小僧。お主、名は?」
その時、少年は自身がまだ名乗っていないことに気づいた。
少年のような背丈と顔でありながら、巨大な剣を背負い、漆黒の鎧を身にまとった少年。その名は――
「俺は『クロン』だ」
これは少年クロンと一人の少女の物語。
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