三十一章 不思議な少年の未来は

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   三人目は先々代の炎帝である。先々代炎帝は、現在、複数人の弟子を取り、弟子を育てながら、西の国で暮らしている。彼はすでに引退した身であり、彼の好意で協力を得られることはあるが、緊急事態でもない限り、世界政府組織が呼び出すのは少々難しい。  そして、四人目が自分である。 「仕事を終えたら、戻って参ります」 「本当ですか?」  ユリアスの表情がぱっと明るくなった。 「はい」  “忍び寄る黒炎”に“紅蓮”を教えるのは、おそらく三十分程度が限界だ。魔法の鍛錬には魔力を消耗する──魔法が不発であっても魔力を消費するからだ──が、それが神級魔法ともなると魔力消費量は桁違いに多くなる。 「お父様」  ユリアスが公爵に視線を移した。公爵は渋い表情でうなずく。 「ありがとうございます」  親子のやり取りの内容は把握できなかったが、公爵が何らかの許可をユリアスに出したように見えた。 「リュース様、お待ちしていますね」 「……はい」  嬉しそうに笑んだユリアスに、リューティスも頬を緩めたのだった。   .
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