三十一章 不思議な少年の未来は

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   ──リューティスは平民である。しかし、幼い頃から総帝という特殊な立場についているが故に、『部下』を率いることには慣れていた。だが、『部下』と『従者』は別物である。  ため息を呑み込み、ファントリアに念話を繋げる。 『──ファントリアさん』 『はい』  リューティスから念話が来ることを予想していたのだろう。ファントリアからの返答に動揺はなかった。 『こちらの準備の関係で、三日ほどお待ちいただきたいのですが』 『承知いたしました。では、三日後にそちらに伺います』 『よろしくお願いいたします』 『いえ、こちらこそよろしくお願いいたします』  ファントリアに了承してもらえたことに安堵しつつ、念話を切断する。 「あちらには伝えておいたから、準備をお願いね」 「承知いたしました」  セドリックはもう一度恭しく一礼すると、ちらりとテーブルのティーカップを見た。 「紅茶をいれ直しいたしますか?」 「……うん」  リューティスがうなずくと、セドリックは部屋の隅に置かれていたティーセットで紅茶を淹れ直し始めた。 「リュース様、今日は何かご予定はありますか?」  話が終わったところで、ユリアスに訊ねられた。頷きたいところであるが、そうはいかないのだ。 「……少し仕事に行かねばなりません」 「そうですか」  ユリアスは残念そうに眉尻を下げた。 .
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