三十一章 不思議な少年の未来は

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   二人の炎帝候補が選出されてから早一月。さらにその次代の帝候補である“七属性の使い手”──リューティスの弟の巧はさておき、次代の帝候補である“忍び寄る黒炎”は未だに神級魔法の発動に至っていない。  その属性の神級魔法が使えることは、帝となるための必須条件である。それが満たせない限り、“忍び寄る黒炎”が正式な炎帝になることはできない。  しかしながら、現在、火属性神級魔法“紅蓮”の使い手は、ギルドが把握している限り、四人しかいないのだ。  一人は先代の炎帝であるガイアだ。だが、彼は南の国の王を継ぐために引退した身であり、現在、毎日毎日忙しく公務をこなしている。故に、彼が“忍び寄る黒炎”に“紅蓮”を教えることはできない。  二人目は“忍び寄る黒炎”の次の代の炎帝候補である巧だ。彼は今、ニアン学園の中等部生であり、学園生活に忙しい。その上、まだ成長期真っただ中の巧は、高魔力保有者体質とはいえ、魔力量はさほど多くなく、魔力が全快した状態でも神級魔法は一度しか使えない。  さらに言えば、彼は神級魔法を使うと、急激な魔力消費で強い眠気に襲われ、その眠気は翌日になっても残ると話していた。眠気が残った状態では、学園の授業にも影響が出るだろう。 .
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