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幻
深く雪を被った鉄骨階段に、人の踏み固めによって、動線ができている。
きん、と固まった星の粒を集めて、いちどきに淡く溶かしたような街灯の光を浴びて、それは青白く浮かび上がっていた。
雪夜に顕現した、巨人の背骨みたいだ、と思った。
向うへ首を垂れて、体育座りをしているらしい。
そっ、と椎骨に足を乗せた。
ぎゅ、でも、ぐ、でもない軋みが鼓膜に届いて、果たしてこれは、無音で佇んでいた巨人の、低語なのではあるまいかと想像する。
きっと、背骨を上がりきった先、夢想は蕩けてしまうだろう。
それまでは聳立してくれるなよ、と、祈った。
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