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千秋楽が終わり、打ち上げも終わり、暖を家に送り届けた。
部屋のドアが閉まった瞬間、暖は蒼士をきつく抱きしめる。
「蒼士さん、終わったよ」
腕の中で頷いた。抱きしめる腕に、更に力がこもった。
「お疲れさま。本当に、よかった」
「緊張したんだ、初日。舞台久々だったし、
でも暗転した時、やっぱりわくわくして。
蒼士さんもきっと今、同じ思いでいるって思ったら、
すごく、勇気が出た」
暖が蒼士にキスをした。
「蒼士さん。……俺たち、もう、恋人?」
「暖は、いいのか、俺で」
「いいに決まってる。俺蒼士さんのこと大好きだよ」
頷く代わりに蒼士からキスをした。キスはすぐ深くなり、お互いに急いたように舌を絡め合う。
「好きだ、好きだ暖。ずっと、好きだって言いたかった」
「俺も好きだよ、大好き」
玄関先で靴も脱がずにキスを交わして、互いの体をもどかしくまさぐった。
「ねえ、いいよね、蒼士さん」
同意を求められて何度も頷いた。
本当に、こんなことをしてしまったら、一度で終われるわけがないのだ。
愛しい相手に好きだと何度も囁かれて、自分も同じ言葉を告げて、体まで繋いでしまったら、割り切った関係でなんて終われるわけがない。
欲望にぎらつく瞳も、初めて見る。耳元に熱い声を吹き込まれた。
「必要なもの、全部用意してあるよ。
通販で、カートに入れるだけで興奮した。蒼士さんに使うんだって思ったら」
暖は蒼士を赤面させるようなことを言う。
だが、蒼士の体は羞恥だけではなく熱くなった。
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