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*****  ――先日の舞台を拝見しましたが、非常に素晴らしかったです。三瀬さんはモデルやドラマの俳優という印象を持たれている方が多かったと思いますが、あの舞台で、俳優としての幅を広げられたのではないでしょうか。 三瀬『そう言って頂けると嬉しいです。元々舞台が大好きで、江連さんのファンでもあったので、今回は本当にいい経験をさせていただきました』  ――また、今発売中の写真集は、咲山冬子さんの作品でもあり、通常の俳優の写真集とは、また違った印象を受けます。 三瀬『咲山さんが素晴らしい方で、あと、フォトグラファーだからなのか、ものすごい観察力で、何でも見抜かれる気がしました。今まで、どこか自分を晒すのが怖いところもあったんですが、咲山さんのおかげで、怖いことじゃないと思えたというか、先日の舞台にもすごくいい影響があったと思います』  ――表紙は、ものすごい色気でしたね。 三瀬『色気ありました? ありがとうございます(笑)』  ――やはり、それまでの経験が反映されているのでしょうか。 三瀬『そんなに経験はないんですが、すごく手ごわくて、面倒くさくて、でもとても大好きな人、っていうのを想像して立ってました』  ――それは実在の方ですか? 三瀬『内緒です』  ウェブ媒体の記事の写真と原稿をチェックして、蒼士はため息をついた。 「これ、恋愛面の話題は差し替えてもらった方が……」 「問題ねえだろ。実在だか嘘だかわかんないように答えてるし」  社長の言葉に、事務所に来ていた暖も口を開く。 「このままでいいでしょ。俺別に恋愛禁止とかされてないですよね」  社長は記事にもう一度目を通し、ニヤッと笑った。 「うまくいってるようで何よりだなあ?」  蒼士は一人赤面した。 「さて、次は映画とドラマの仕事が来てる。 どっち受けるかは台本読んでから決めていい」  暖は喜んで社長から台本を受け取る。 「蒼士さん、本読み付き合って」  頷いて立ち上がる。今も仕事とそれ以外との線引きは難しい。  これから暖を送り届けて、本読みに付き合う。二人で、仕事を一番優先しようと決めた。  車に乗り込むと、暖が真剣な声で言った。 「俺のこと、支えてね。 俺も、恋人としてあなたを支えられるようになるから」 「ああ」  見上げると、暖は笑う。  最初に惚れ込んだ笑顔とはまた違う、愛しさの溢れた顔だった。 「今日、泊まるよね?」  後部座席から耳元に唇を寄せ、暖が甘く囁いた。そっと頷く。  仕事が終わった後は、互いの線引きはすべて溶かして、ただの恋人になれる時間が待っている。
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