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ミント色の髪と青色の髪が一緒にうろついていると目立つ。あっという間に俺たちは、付き合ってもいないのに、色んな意味でヤバいカップル認定され、そう認知された。
「えっ? お前たち付き合ってないの⁈ ヤバいもん同士だからてっきり…‥」
高校の時の同級生で同じ大学に進学したヨッシーからもそう言われて、俺はちょっとショックだった。
「ヨッシー、マジで勘弁してくれ。俺はどっちかって言うと付きまとわれてるだけだ」
「でもミユちゃんよく見たら可愛いじゃんか。ユウジが何とも思ってないなら、俺、ちょっとアプローチしてみようかな」
「お前あんなのが好みなのか?」
「あんなのってないだろ。目とかくるっとしてて、ちょっと小さくてさ、小動物系の可愛さがあるじゃん。笑ったらえくぼ出るし」
「よく見てんだな」
俺はミユの事を何とも思っていないはずなのに、友達がミユを女として見ていることが何となく不愉快だった。
「ミユちゃん俺に紹介してよ」
「あー、考えとく」
「頼んだぜ!」
ヨッシーはそれから、俺たちの周りによく出没するようになった。
「ねえねえミユちゃん、今はどんなキャンディーが流行ってんの?」
的確にミユの好きな話題を振ってくる。俺は一度だって自分からキャンディーの話なんてしたことは無い。ミユは喜んで話している。
「えっと最近だと”まろやか屋”って会社があるんだけど、そこの棒つきキャンディーの新作がね……」
気付いてはいたがミユはオタク気質だ。キャンディーや詩集を集め、知る事に関しては異常な情熱を掛けている。分野がマニアックで偏りが過ぎるが、俺も一種の音楽オタクだから、その偏愛する気持ちは理解できた。
だから、話なんか振ろうもんなら延々と話し続ける。
「あ、あーミユちゃん、うん、よくわかったよ。ホントありがとう。あ、俺そろそろ友達と待ち合わせてるから、じゃ、また!」
「ヨシキくーん、またねー!」
ミユが大きく手を振って立ち去るヨッシーを見送った。
早々にヨッシーが尻尾巻いて逃げやがったな。後でメッセ送っといてやろう。もう音を上げたのか、って。
「ヨシキ君、忙しかったんだね。そんなにキャンディーに興味があるなら、今度表にしてプリントしてあげようかなー?」
俺は腹を抱えて大笑いした。その表をもらって困った顔をするヨッシーの顔がありありと浮かんだ。それに気付かずにミユはきっと満足気にしてるんだ。
「ユウジ、何がおかしいの?」
「お前、サイコーだよ……! マジで、キャンディーラヴァーだよ、本物の」
一生のうちで一番笑ったんじゃないかと思う。
そう、ミユといる時だけ、笑えていた気がする。
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